家族からの逃亡。アンバランスな心。早すぎた結婚と別れ|第2回・機能不全家族とPTSD

家族からの逃亡。アンバランスな心。早すぎた結婚と別れ|第2回・機能不全家族とPTSD

こんにちはこんばんは、氷野です。

前回は、紫絵里さんがPTSDと診断されるまでの経緯と、その原因となった家庭環境、また辛い日々の中でも支えてくれた「うさぎ小屋の彼女」との物語を書いていただきました。

今回は、紫絵里さんの中学時代からの物語をつづっていただきます。

生きている意味を問う。

こんにちは。紫絵里です。

やがて中学生になり多感な時期を迎えると、わたしの中で「生きる意味を問う」ようになりました。

答えは簡単。

「生きてる意味なんてあるわけねーだろ!」

その気持ちと荒れ狂った感情は自分へと向かい、言葉とは裏腹に、

「自分は実の親から虐待をされても仕方がない人間なんだ。クズみたいな存在価値なんだ。」
「生きていたくない。」
「こんな自分、消してしまいたい。」
「 消えるべきだ。」

常にそんな気持ちを抱えながら、いつ死のうかとばかり考えていました。

中学2年生の時、久しぶりに父親から襲われそうになり、初めて思い切り抵抗をしました。

大声を出して包丁を振り回し、あの日言われた言葉「殺すぞ」を、父親の耳元で言い、顔面に唾を吐いてやりました。

真っ青な顔、小刻みに震える身体。

これがわたしを苦しめ続けた悪魔の姿だったなんて…

わたしは高笑いをしながら、止まらぬ涙をもて余して、家を飛び出しました。

その日から1週間、親友の親御さんに保護されるまで、どこをさ迷っていたのかの記憶がありません。

今だに思い出せずにいます。

いい子からヤンキーへ! アンバランスな感情と心。

中学2年の出来事を境に、わたしの外見は変貌しました。

幼い顔には似合わない濃いメイクをして、髪の毛は金髪のパーマ。

そうです! いい子からヤンキーへの華麗なる変身です。

改造した制服を着くずし、タバコをくわえながら歩く様は(違法ですよ!)、周囲の大人達に大きな動揺を与え、教師たちからは煙たがられる存在になり、他の生徒たちからは 「キレたらやばいヤンキー」と恐れられるようになりました。

全てのことに苛立っていました。

地面に吐きまくっていた唾は、世の中の全ての大人に対する抵抗と抗議だったように思います。

そして何より、わたしを弄んだ父親と、同族の最低な母親への最大限の威嚇と反撃だったのだと思います。

しかし1番わたしが苛立っていたのは、周りの大人たちや両親への怒りを爆発させる一方で、相変わらず自分を責め続けるという「アンバランスで危うい自分自身」だったように思います。

結局はどんなに外見を変えてみても、本当の意味で「いい子から卒業」することは出来なかった。

そのようにも思えてなりません。

残酷な現実。

ヤンキー高校生から看護師になるまでの話は、前回ご紹介したとおりです。

あ!安心してください。

看護師を目指すと決めた日に、金髪を黒髪に戻しましたので 笑。

そして、働きながらの治療を続けていたことも書きましたね。

外来担当になり精神科の受診も続けていましたが、診察を重ねていく内に、様々な症状が出て来てしまいました。

職場のみんなに迷惑を掛けてしまっているなと、そろそろ仕事も限界かもと、わたしは大好きな看護師の仕事を辞める決意をしました。

泣きながら止めてくれた同僚達に、感謝の気持ちと申し訳ない気持ちで一杯でした。

わたしはまた、大切なものを失ってしまった。 絶望感しかない、なにも考えられない。

1度目の結婚、早すぎる別れ。

再会。

仕事を失ったわたしは、本格的な治療を始めることになります。

担当医が病院を辞めて開院する時期に合わせたことも、退職の理由の1つでした。

本腰を入れて治療に専念するぞ! なんて、とても前向きには捉えられませんでした。

本当はもう、全てを終わりにしたかった。

ここまで頑張ったからもういいよ。

けれど死んだら悲しむ人がいる。

病院の帰り道、いつもとは違う道を歩いていたら、元気な声で呼び止められました。

懐かしい顔!高校の同級生だった男の子でした。

「おー!久しぶりだね」

相変わらずイケメンな彼は、ボーイズバーで働いているよと。

「なるほど、天職かもね」 なんて軽く話をし、連絡先を交換してバイバイしました。

再会から1年後、わたしたちは結婚しました。

幸せな結婚。だったはずが。

病気を理解しようとしてくれる彼。

守ってくれる彼。

しかしある日から態度が豹変しました。

そして言われたのは

「お母さんから聞いた。 お父さんが初めての相手とか、無理だから」

またか… また、邪魔をするのか… また、わたしを壊すのか…

結婚してから1年半、2人は別居をして、その1年後、正式に離婚をしました。

短すぎる結婚生活。

早すぎる別れ。

わたしは家庭を持つ資格もないのか。

そうだよね、忘れていたよ。

ありがとう、ごめんなさい。

生きているのに、生きていない。

離婚をきっかけに、わたしの症状は急速に悪い方向へ進む一方でした。

OD(オーバードーズ)を繰り返しても失敗に終わる。

ならばとリストカットをプラスしてみても、昏睡状態になるがまた生きてしまう。

死にたいのに死ねない不幸。

生きているのは汚れた肉体のみ。

消えたい、消えたい、消えたい…

病院のベッドに拘束されながらも、次の方法を考えている。

次こそは失敗しない方法で… 次こそは確実な方法で…

この世から消えることを考えている時だけ、自分が生きていると実感出来ていた矛盾。

あの頃は気付かなかったけれど、 それはもう、生きているのに、生きていない。

今ならばそう思えます。

新しい医師との出会い。

自傷行為を繰り返すうちに気付いたことは「わたしは死ぬことも許されないのだ」ということでした。

自傷行為を幾度となく繰り返し、止まないことを見かねた医師から
「長期入院をしましょう」
と提案されました。

仕事を辞めて、病気が進行したことで、一人暮らしが困難になり実家に戻っていたわたしの心は休まることがなかったため、医師からの提案を受け入れて【家族関係専門の精神病院】に3ヶ月間の入院をすることになりました。

入院前に行った診察と担当医からの紹介状で、大体の症状と原因を理解していた入院先の新しい男性の担当医がはじめに言ってくれた言葉は
「よく生きていてくれたね」
でした。

頷くことも出来ない、ただ、胸が苦しくて、とても熱くて、涙が止まらない。

やっと絞り出した言葉は

「はい」

でした。

人からの刺激に弱いわたしは個室での入院生活となり、主に薬物治療と医師との面談をすることになりました。

10種類以上の投薬と点滴のお陰で、入院初日から2日間、わたしは寝続けました。

それは生まれて初めての経験であり、いかに緊張状態で生きていたのかを実感する出来事でもありました。

初めて知る、【家族】の【いびつさ】

【家族という箱】

医師との面談を重ねていくうちに、【家族という箱】の中で、身動きが取れないようにと気持ちをコントロールされていて、両親の支配下にいるのだと言われました。

同じ家の中に【加害者】と【被害者】が同居している状態であると、逆三角形の図で表してくれました。

そしてそれはとてつもなく危険なことであると。

その説明をされても、逆三角形の図を見ても、わたしにはイマイチ理解が出来ませんでした。

それを察した医師がすかさず指摘したのは
「今のあなたの感情こそが、支配下にある証拠なんですよ」
そして
「加害者と被害者は離れなければなりません。早急に離れましょう」
「逃げてもいいんですよ」

「加害者と被害者?」

「支配?」

「逃げる?」

なかなか理解出来ないことを、時間を掛けて何度も、何度も、医師と話し合いました。

キャンパスノートに書き殴った日。

そしてある日の面談で
「親からされて嫌だったことを紙に書いてみましょうか」
と言われて、キャンパスノートを差し出されました。

「ぶたないで」

「けらないで」

「くるしい」

「いたい」

「やめて」

「さわらないで」

「こないで」

「こわい」

「わたしのくまさんかえして」

「ぜんぶもやさないで」

「きもちわるい」

「だいきらい」

「しね」

「きえろ」

「いなくなれ」

真っ白だったノートはボールペンの字でみるみる埋まり、感情が高ぶったわたしは泣きながらその紙をビリビリに破き、
「大嫌いなんだよー!」
と叫んでいました。

医師は私の背中をさすりながら、
「それでいいんだよ。」
「君は間違っていないんだよ。」
「怖かったね。苦しかったね。」
「もう、終わりにしようね。」
と言ってくれました。

その時初めて【支配】されていたことを理解出来たように思えました。

「もう、逃げたいです。」
「もう、終わりにしたいです。」

絞り出すように言った言葉に医師は応えてくれました。

「辛いこともあるだろうけど、君ならば大丈夫。」
「助けるから、逃げようね。」

身体中のチカラが抜けていくのが分かりました。

傍にいた看護師に抱きしめられながら、血が出るほど強く、唇を噛み締めていたことを覚えています。

これまでの更新:

わたしを苦しめる【歪んだ親子関係】。唯一の【安心できる場所】|第1回・機能不全過程とPTSD

悪魔との決別。アンバランスな心。早すぎた結婚と別れ|第2回・機能不全家族とPTSD

家を出る。親友の存在と親友が与えてくれた生きる意味。|第3回・機能不全家族とPTSD

終わりのない闘い。心の断捨離。過去と現在と未来。|最終回・機能不全家族とPTSD

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