統合失調症・アルコール依存症に悩まされながらもヘルパーさんの支援で在宅生活している花子さんについて~後編|第7回・精神疾患への支援について

統合失調症・アルコール依存症に悩まされながらもヘルパーさんの支援で在宅生活している花子さんについて~後編|第7回・精神疾患への支援について

①家族構成

・花子さん(60歳・統合失調症・アルコール依存症)
・内縁の夫(65歳)
の二人暮らしです。

②関わっている支援機関と関係者

・地域生活支援センター精神保健福祉士
・相談支援専門員(私)
・作業所スタッフ
・ヘルパーさん
・近くに住んでいて統合失調症患者である大輔さんと俊介さん
・保健所スタッフ
・警察官

③同居人の死もヘルパーさんと一緒に乗り切りました。

ヘルパーさんを導入してからは花子さんは落ち着いた生活を取り戻す事が出来ました。

ヘルパーさんは調理をするだけでなく、花子さんに寄り添って様々な相談に乗ったからです。

そのため統合失調症の妄想もほとんど消失し、アルコールも全く飲まなくなりました。

しかし私には気がかりな事がありました。

それは内縁の夫の体が非常に弱くなり、寝たきりになってしまっていたことです。

そしてその悪い予感は当たってしまったのです。

ある日ヘルパーさんから私に連絡があり、花子さんの内縁の夫が亡くなったという知らせを受けました。

とっさに私とヘルパーさんは「花子さんが自殺してしまうのではないか。」と心配になり、ふたりで花子さんの家を訪問すると、そこには泣き崩れている花子さんがいました。

その時私とヘルパーさんはとにかく花子さんの話を聴き、そばを離れませんでした。

そうしたら花子さんから「人並みのお葬式をしてあげたい。」という願いを聞くことができました。

そのため私は花子さんが提示した予算でお葬式ができる葬儀社を探しました。

そして花子さんは内縁の夫と今生の別れをすることが出来たのです。

④花子さんにも命の危険が迫っていました。

内縁の夫との別れから約1年間、花子さんはヘルパーさんの支援を受けながら、回向の毎日を過ごしていました。

そして、サービス利用等計画の更新時に花子さんは、
「もう内縁の夫は成仏したから、前向きに生きないといけないですよね。」
という言葉が聞かれるようになり、私はもう安心だと思うようになりました。

しかし私には気がかりな事があったのです。

花子さんが作業所に通所していた時の知り合いの俊介さんが、
「花子のおかげで俺は頭がおかしくなった。ビラを撒いてやる。もし花子を見つけたら殺してやる。」
と言いだしていたのです。

実は俊介さんも私が相談支援専門員としてヘルパーさんを依頼していた人だったのです。

もちろん花子さんが原因で俊介さんが病気になったわけではなかったので、そのことを俊介さんにきちんと伝えたのですが、妄想が酷くなっていた俊介さんは聞く耳を持ちませんでした。

この事を俊介さんの主治医と保健所スタッフに報告して、私と保健所スタッフは俊介さんの主治医の指示のもと花子さんには絶対に危害を加えないように話をしていました。

しかしとある日、スーパーマーケットの駐車場で、俊介さんと花子さんがばったりと会ってしまい、俊介さんは原付バイクで花子さんを殺害しようとしました。

たまたまその場に私用で買い物に来ていた市役所保健師が、すぐに110番通報しその場で俊介さんは取り押さえられ、保健所スタッフにより措置入院の措置が取られました。

そしてその夜は花子さんが不安にならないように、花子さんを警察署に宿泊させて、女性の警察官が寄り添ってくれたそうです。

私がこの事実を知ったのは、事件の翌日でした。

心配になった私とヘルパーさんは私が事件を知ったその日に、極力花子さんに寄り添うようにしました。

そして「大丈夫だよ。花子さん。」と何回も何回もゆっくりとした口調で言いました。

⑤大変な事件に巻き込まれ、花子さんは苦しみました。

このような大変な事件に巻き込まれた花子さんは私に会うたびに「俊介さんに殺されるかもしれない。」というようになりました。

私はこの時悩み苦しみました。

なぜかと言うと私は俊介さんの相談支援専門員でもあったので、俊介さんがどこの精神科に強制入院させられているのか、そしておそらく俊介さんは亡くなるまで精神科の病院を出ることはできないことを知っていました。

しかし私は花子さんの相談支援専門員でもありますが、俊介さんの相談支援専門員でもあったので、むやみやたらに俊介さんの情報を花子さんに伝えることはできませんでした。

花子さんの心の安定を考えると、「俊介さんは2度と精神科の病院から出てくることはないよ。」と言いたかったのですが、どうしてもお茶を濁すような言い方になってしまったのです。

困った私は私は俊介さんの措置解除を担当する保健所スタッフと相談したうえで、花子さんに
「今は俊介さんは入院しているので、大丈夫です。
「そして万が一退院の話があっても、その時には保健所スタッフと私が徹底的に俊介さんに指導するので大丈夫ですよ。」
と伝えました。

すると花子さんは
「あなたがそういうなら安心です。」
と言ってくれました。そして
「あなたは俊介さんの相談支援専門員でもあるから、お茶を濁すような言い方になるのは仕方がないですよね。
「でもあなたがそのように言うってことはおそらく帰ってこないってことが私にもよく分かりました。」
と言ってくれたのです。

その時の花子さんの安心した顔は、今でも忘れることが出来ません。

⑥事件を乗り越えて、元気にピアノを演奏する花子さんになりました。

それから半年ぐらいは花子さんはヘルパーさんに時々俊介さんに関する不安を訴えていたようですが、徐々に俊介さんに関する話題は言わなくなりました。

そして事件から1年程度過ぎ、サービス等利用計画の更新作業でヘルパーさんと一緒に花子さんの家を尋ねたら、美しいピアノの音色が流れていました。

なんと花子さんが昔利用していたピアノを使って、ショパンの代表曲を演奏していたのです。

美しい音色に思わず
「綺麗な音色ですね。本当のピアニストみたいですね。」
と花子さんやヘルパーさんに言いました。

そして苦手だった家事もある程度まで自分で出来るようになっていたのです。

おそらくこの姿が統合失調症・アルコール依存症発病前の心優しい花子さんなのだろうなと思いました。

それから、私が訪問するたびに、私の体調を心配してくれるようになりました。

これからもこのような心優しい花子さんの生活を、相談支援専門員・精神保健福祉士としてヘルパーさんや市役所保健師と連携しながら支えていこうと思います。

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