冷房が寒すぎる…発達障害と皮膚感覚の困難|第十回・発達障害を考える

冷房が寒すぎる…発達障害と皮膚感覚の困難|第十回・発達障害を考える

今日は外出先でこの記事を書いているのだが、腕が冷えるせいでお腹まで冷えて腹痛を催してきた。パニック障害的な腹痛であればと頓服薬(ミルタザピン)を服用したおかげで少々は楽になったが、それでも体の冷えは止まらない。

なぜ都会の建物内というのはこれほどまでにキンキンに冷えているのか理解に苦しむところである(いや、暑いよりも寒い方が服を着るだけで対処できるからよいだろうという顧客満足の観点からであることはまごうことなき真実だと思うのだが……それにしても腹が痛い……)。

ということで、今回は発達障害と皮膚感覚に関する記事を書いていこうと思う。

発達障害と「皮膚感覚」

閑話:東京学芸大学による電話相談支援

まさか発達障害を持っている人は体温調節が不得手だ、などという文献はないだろうとタカをくくっていたら、なんと、あった。また東京学芸大学である(以前の記事で参考論文として紹介したものも東京学芸大学から提出された論文が多い)。

なんというか氷野が浅学だったというか、東京学芸大学は発達障害者のための支援を多く行なっていた。次のURLからは東京学芸大学が行なっている電話相談のホームページに飛ぶことができるので、もし発達障害に悩んでいる方で、研究者に相談したいという人がいたらこちらの相談窓口を利用してみるのもいいかもしれない。

発達障害の「皮膚感覚」

さて、本題の発達障害者が抱える「皮膚感覚」に関する困難についてである。ここで全てを紹介すると膨大な量になってしまうので、今回は次の聞き取り調査・研究の中から抜粋して見ていこう。

発達障害者の「皮膚感覚」の困難・ニーズに関する研究 : 発達障害の本人調査から

「皮膚感覚」とは

そもそも「皮膚感覚」は、生物が進化する過程の比較的初期段階から備わっていると考えられる「原始感覚」と、意識的に触ることで特徴を認識するという「識別感覚」の二種類に分かれている。

この二種類の感覚から得た情報を使って、身体を認識したり、取るべき行為を決定したり、情緒を安定させたりする等の様々な能力を発達させていくとされている。

発達障害者の「皮膚感覚」の「過敏さ」ないし「鈍感さ」

近年では研究が進み、皮膚そのものにも脳と同じ情報処理機能が存在することが判明するなど、皮膚と脳の共通点が多く発見されているという。

しかし、発達障害者はこれらの感覚を過敏に感じ取ったり、逆に感覚に対して鈍感であったりするなどの「感覚情報処理障害」を抱えているとされ、身体にまつわる問題の大きな原因であることが最近の研究により次第に明らかになってきた。

つまり、発達障害者が皮膚感覚の過敏さないし鈍感さを訴えているということは、この、皮膚が本来機能させるべき機能を正しく機能させられず、脳に正しい情報が伝えられていない状態にあるということになる。

そうなるとこうした皮膚感覚の不具合は心や体の両面に影響を与えることになるのだ。

発達障害の「皮膚感覚」の困難と支援

抜粋の基準は氷野が「あっこれは氷野も体験しているぞ」と思ったかどうかである。なんなら、「えっ、これって他の人は気にならないの?!」と思う内容も多かった。

抜粋の仕方が恣意的であると指摘を受けてもしょうがないかもしれないが、そう思った人もそう思わなかった人も、自分に当てはまる項目があるかどうかぜひ論文をチェックして見てほしい。

1)触覚

触覚に関しては氷野が共感するものが比較的上位に来ていた。

困難:

・首にタグが触れるのはちくちくして耐えられない

・服が濡れたとき に肌に張り付くのはどうしても我慢できない

・軽く触れられると過剰にくすぐったくて辛い

・好きな人でも、肩を抱かれるのも,手を繋がれるのも嫌である。体に触れられると思うと相手が誰であれ緊張する

支援:

・好きな感触の毛布やマット、ふわふわのぬいぐるみ等があると安心できる

・毛布にすっぽり包まれている感触は、体調や気分の悪さから気を紛らわしたり、不安を和らげたり、すり減った神経を休めたり、ピリピリ・イライラした感情をなだめたりする効果がある

・洋服のタグ は外す。タグを外せない物は買わない(氷野はなんならタグを外せない場合ハサミで切り取ってしまうが……)

・動揺しているときに、手をつないで励ましてもらえると安心できる

・ぎゅーと静かに抱きしめられると安心する。長くやるとより安心する

・そっと抱いてもらうことが、どんな薬やセラピーより、何よりも役に立ってくれる

触れられることが苦手、という困難と、触れられると安心する、という解決策は矛盾しているようにも見えるが、これらが並存するのはなぜだろうか。

条件が異なるからかなあと氷野は思う。氷野の場合、「望まない時に触れられるのは苦手」であるが、「望んでいる時に触れられると安心する」からだ。つまり触れられる本人がそれを望んでいるか否かが嫌だと思うか心地いいと思うかの分かれ目のような気もする。

2)圧覚

氷野の場合、圧覚に関しては困難よりも支援の方に共感を覚えた。

困難:

・低気圧がくるときは空気がいつもよりも重く、全身にずっしりとまとわりつくように感じる

・帽子は痛い(氷野の場合、痛いというよりも不快で気になる)

支援:

・マッサージは緊張がとけ、リラックスできる

・寝るときは、掛け布団にくるまって、すっかりうもれて寝ている

・毛布にくるまったりマットレスの下にもぐったり、ソファのクッションの下にもぐりこんだときの圧迫が心地よい

・分厚いものにはさまれていると安心する

・カチッとした服を着ていると、自分の体がわかる

氷野は昔から狭いところに入り込むのが好きであった。子供の頃は冷蔵庫と壁の間のわずか2〜30センチの隙間によく意味もなく潜り込んでいたし、以下の記事でも紹介したように、納戸の中に設けられた本棚と雑多に置かれた段ボールの間に挟まって本を積み上げてその中で読書に耽るのが至高の楽しみであった。

また、衣類に関してもぴったりと身体に沿うものが好きで、そうでないものはなんでかソワソワと落ち着かない気分にさせられてしまう。

3温覚・冷覚

これは今回のテーマであるところの自分で体温調整するのが難しい、という項目のほかに、身体が温まるとかゆくなるという項目が、氷野が一番共感したところである。

困難:

・自分で体温調節をすることができない

・外部と自分の身体との温度差に過剰に反応する

・暖房で体が温まると皮膚がかゆくなり不安になる

・おふろのお湯が普段より一度上がっていても体がかゆくなる

支援:

・体温調節が苦手なため、衣服で温度調節をしている

・熱いお湯は痛いけれど体に心地よい効果をもたらす

・手や足は感覚がないけれど、熱を受けると両手両足の存在を感じる

体が熱くなると痒くなるのは本当に困ったことだ。興奮すると誰しも体温が上がるものであるが、そうなると、氷野の場合全身が痒くなってくるのだ。これはイライラしたり怒りを覚えたりしていても起こる現象なので、この現象を逆手にとって氷野は体が痒くなっているかどうかを、イライラ度合いの指標のひとつにしている。

4痛覚

これは発達障害を持っている人なら誰しもが経験していることではないだろうか。氷野も思い当たる節が多すぎる。この項目についての支援は特に言及されなかった。

困難:

・すり傷、切り傷、打ち身は日常茶飯事だが、気づかない

・身体のあちこちが常にかゆい

・教えてもらうまで痛みを感じたり、痛みに気付くことができない

5物理的距離

これもまた耳が痛い話である。

困難:

・人から近寄られるのは好きではない

・電車で人に挟まれて座るのは耐え難く苦痛である

・混雑した場所では、人や物をうまくよけられずにぶつかったり、足を踏まれたりする

・相手の空間に入り込んでいることに気づかずに、相手に近寄りすぎることがある

・人との物理的距離感がわからずにぶつかってしまう

支援:

・列に並ぶときには十分な間隔をとってほしい

・体に触れる前にはあらかじめ声をかけてほしい

・他の人とどのくらい距離をあければ失礼にあたらないか教えてほしい

これは苦い思い出があって、高校時代に遡る。当時から氷野は人との距離感がおかしいことが指摘されていたが、そこは女子高であったことが幸いし、友人同士のじゃれあいがちょっと行き過ぎているくらいに認識されていた。

しかし氷野の過度なボディータッチを好意と勘違いしたある女子が(しかも複数)、ストーカー化し、果ては氷野の伴侶に脅迫文を送りつけたりカッターで刺そうと襲ったりしたのだ(しかも複数である)。

幸いにして氷野の伴侶は心が図太いというか、格闘技経験者であったため女性がある程度何か暴力的な手段に出てもやりかえせるという自信があり、実際に自衛ができたのだが、「今でも思い出してもゾッとする」とよく口にしている。

自分の距離感のおかしいことが発端となってとんでもない事件になってしまったことは本当に申し訳ないと思う次第である。

発達障害と体温調節の不具合による体調不良の例

最後に、いくつか本記事に関係するブログ記事を紹介して終わることにしよう。主に今回この記事を書くきっかけとなった「体温調節」に関する記事をピックアップすることにする。

『ADHD息子の体温調節機能』

発達障害と体調不良の関係は?我が家の生活改善の工夫【LITALICO発達ナビ】

発達障害は往々にして自律神経失調症を合併症として引き起こしやすい。その自律神経失調症が、こうした体調不良を引き起こしているのだとすると、日常に起こってきたいろいろなことに合点がいく。

なにかのストレス源にぶち当たって体調不良が起きた時、体調不良だ!と焦るのではなく、原因はそうした自分の皮膚感覚の不具合によるものだと思い出し、冷静に対処できるようになっていきたいと思う今日この頃なのであった。

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