発達障害と在宅ワークの相性はいいのか|第十八回・発達障害を考える

発達障害と在宅ワークの相性はいいのか|第十八回・発達障害を考える

先日自分が在宅ワークをすることの可能性についての記事を書いたが、それがどれくらい一般的なものなのか気になったので、調べてみることにした。

発達障害とともに働く~フリーランスという可能性|第十五回・発達障害を考える – ココロメンテ.com

発達障害者の在宅ワーク

「スキマワーク」という選択肢

クラウドソーシングサービスである「クラウドワークス」で「発達障害と在宅ワークの関係について教えてください」というアンケートを取ってみたところ、圧倒的に多かった答えが、「お小遣い程度になるタスク作業やアンケート記入の仕事をしている」というものであった。

その回答をいくつか紹介していこう。

※掲載にあたり誤字脱字の修正などいくつか校正を加えた箇所がある。

ケース1:広汎性発達障害(軽度の知的障害)

1. 発達障害の種類または発達障害の傾向を教えてください。またご自身の性格・特性について教えてください。

広汎性発達障害と言われましたが、軽度の知的障害で自分がこうしないといけないと思うととことん気がすむまでやらないといけなくて、自分ですぐに辞める事が難しいです。

2. ご自身に合っていると思ったお仕事について、発達障害やご自身の性格を踏まえて理由とともに教えてください。

自分で次の事がかんがえられないので工場などで同じ作業をしていくのが性格上合っているような気がします。

性格はのんびりなので流れ作業より個人でもくもくとマイペースにするような仕事が向いていると思います。

3. ご自身に合っていないと思ったお仕事について、発達障害やご自身の性格を踏まえて理由とともに教えてください。

介護の仕事です。理由は、色々な人と関わるためです。

臨機応変に動く事が難しいし色々な作業が次々と出来ないので人と関わる仕事は難しいと思いました。

ケース2:学習障害の傾向がある

1. 発達障害の種類または発達障害の傾向を教えてください。またご自身の性格・特性について教えてください。

たぶん学習障害で小さい頃から親が悩んでいたように感じました。

一生懸命勉強しても、周りよりかなり時間かかって覚えていました。

でもあまり気にせず生きて来ました。前向きに考えて生きてきました。

2. ご自身に合っていると思ったお仕事について、発達障害やご自身の性格を踏まえて理由とともに教えてください。

1番はやはり直接人と会って話したり、見られる事とかも全く無いから安心して取り組める事や、自分のペースでやれるから印象とか探られたりする事が無いので、合っていると思います。

3. ご自身に合っていないと思ったお仕事について、発達障害やご自身の性格を踏まえて理由とともに教えてください。

とくにたくさんの人が働いている職場は誰もが、同じ事をするのが当然です。

自分は変わってるので目立ってしまい、悲しい思いをした事が多かったので、こじんまりした会社で再就職したら、自分を理解してくれる方が責任者だったこともあり、ながく勤務出来ています。

ケース3:アスペルガー症候群の傾向がある

1. 発達障害の種類または発達障害の傾向を教えてください。またご自身の性格・特性について教えてください。

病院で発達障害のテストと診断をうけていませんが、おそらく、その傾向があると自覚しています。自ら受けた、ネット上のテストではアスペルガー傾向が強いようでした。性格はまじめで、潔癖症なこだわりがあります。

2. ご自身に合っていると思ったお仕事について、発達障害やご自身の性格を踏まえて理由とともに教えてください。

単純なコツコツ作業の地味な繰り返しが向いているのではないかと思います。それから、どのような仕事でも慣れてパターン化してしまえば問題なくできると思います。

3. ご自身に合っていないと思ったお仕事について、発達障害やご自身の性格を踏まえて理由とともに教えてください。

文章を書いたり、自分の意見を述べたりするのが苦手です。時々、挑戦しますが、物凄く恥ずかしくてストレスを感じます。

ケース4:ADHDもしくはその他発達障害の傾向がある

1. 発達障害の種類または発達障害の傾向を教えてください。またご自身の性格・特性について教えてください。

・飽きやすい

・時間の管理がうまくできない

・マルチタスクができない

その事から、

・集中力がない

・予定を立てて行う事が出来ない

同時にマルチタスクが苦手なので一つの作業しか出来ない傾向にあります。

2. ご自身に合っていると思ったお仕事について、発達障害やご自身の性格を踏まえて理由とともに教えてください。

一つの作業だけを行える仕事、適度に休憩が出来る仕事が合っていると思いますが、まだ見つかっていません。

そのため、集中力がある時に一つの作業に集中できるクラウドソーシングのタスク作業が今は一番合っています。

3. ご自身に合っていないと思ったお仕事について、発達障害やご自身の性格を踏まえて理由とともに教えてください。

マルチタスクが苦手なので、とにかく複数の作業を同時に行うような仕事が無理です。計画を立てる事も苦手です。

経験上では、時間配分を上手くしないといけなく、電話対応も同時に行う事務作業は無理でした。倉庫作業も時間管理が必要で予定を立てる事が無理だったので向いていませんでした。

ケース5:高機能自閉症

1. 発達障害の種類または発達障害の傾向を教えてください。またご自身の性格・特性について教えてください。

高機能自閉症:落ち着きがなくこだわりが強い。興味のない話には無関心だが、興味のある話には詳しく積極的に話に加わる。

自分はその傾向に当てはまっています。

2. ご自身に合っていると思ったお仕事について、発達障害やご自身の性格を踏まえて理由とともに教えてください。

データ処理:特定のことには異様なほどの集中力を発揮し、膨大なデータでも苦にせず最後まで成し遂げることが出来ます。大学の卒業論文がそれにあてはまりました。

個人的には地道にコツコツ行う作業が好きです。

3. ご自身に合っていないと思ったお仕事について、発達障害やご自身の性格を踏まえて理由とともに教えてください。

1度に複数のことを行うような業務:優先順位をつけることは苦手ではないですが、しなければいけないことを忘れやすく、かなり時間たってから思いだすこともしばしばです。

接客:人と話すことは嫌いではないですが、無意識に他人が不快になるような会話をすることがあります。(当然悪意はない)

回答者それぞれの個性もあるので一概には言えないが、全体として、

・マルチタスクが苦手

・たくさんのひとと関わるのが苦手

・恥ずかしい思いや苦い思いをした経験がある

という傾向があるようだった。

かく言う氷野自身もマルチタスクは苦手であり、ひととうまく関わることができないので、一人で黙々とデスクに向かっているような仕事の方が性に合っていると感じている。

在宅ワークについてまとめているサイト

いくつか、発達障害と在宅ワークの関係についてまとめているサイトを紹介しておこう。発達障害と一口に言っても種類や程度はさまざまであるので、それぞれ別個で参考にされたら良いと思う。

発達障害で向いている仕事 適職と環境を特性別に考えてみる

発達障害でバイトが辛い大学生は、バイトを辞めてライティングをしよう。

フリーランスは発達障害の人にも向いている。得意を生かし、苦手なことはしない。 | Cool Workers(クールワーカーズ)

通読して思ったのは、「デメリットはあるものの、在宅ワークは発達障害を抱えている人に向いている職業だ」としているものが多かった、ということだ。

特に印象的だった記述が、ふたつめのリンクの中で筆者が言及していた、発達障害者と「簡単な業務」の相性の悪さに関する記述である。

アルバイトの仕事内容は難しい作業が少ない分、簡単な作業の組み合わせで成り立っています。

例えば、飲食店のホール。

専門的な知識やスキルは必要ありませんが、

  • 注文を聞きながら書く
  • 注文を頭の片隅に置きながらテーブルの片付け
  • 作業をしている最中に予約の受付電話対応 など並行作業が多いはずです。

一つ一つは簡単なので、高校生でもできます。しかし、組み合わせると急に難しくなります。

発達障害の人はワーキングメモリが弱くて並行作業が苦手な人が多いので、一見簡単な作業が難しく感じられます。

これはまさに氷野自身が感じていたことで、一般事務の仕事をしていた時に、一つ一つの業務は簡単なのに、その種類と組み合わせの多様さに目を回した経験を思い出した。

その分、在宅ワークであれば、今何に着手するか、を管理する難しさはあるにせよ、その管理自体に慣れてしまえば、目の前のことだけに集中できるので非常にやりやすいのである。

能力のハード面とソフト面、という考え方

こちらの論文は早稲田大学の梅永雄二氏が執筆したものであるが、その中に発達障害者、特にASD者が就労する上で立ちはだかってくる壁に関しての興味深い記述があった。

発達障害者の就労上の困難性と具体的対策 ─ ASD 者を中心に

対人関係スキルや仕事に対するモチベーションなど仕事に直結しないが日常生活能力や対人関係など就労生活に間接的に関連するスキルのこと をハードスキルに対して「ソフトスキル」と呼んでいる。

このソフトスキルには次のようなものがあると梅永氏は語る。

・身だしなみ

・時間の管理

・余暇の使い方

・日常的な家事

・対人、コミュニケーション

・金銭管理

・その他

発達障害を持っている人が、就労において、時間の管理やコミュニケーションといったものに困難を感じやすいという点については多くの議論がなされているが、梅永氏が身だしなみや余暇、家事といったプライベート面にも着目しているのは非常に興味深い。

さらに論文から引用させてもらうと、次の点も留意しておくべきだろう。

過去40 年間 ASD 者の就労支援を行ってきた 米国ノースカロライナ州 TEACCH プログラムの援助つき就労(Supported Employment)部門では, ASD者の離職理由の 8 割以上がハードスキルではなく,ソフトスキルの問題だったと報告されている。

氷野がこれらのことから推測するに、発達障害を持っている人が働くことに困難を感じるのはなにも業務中だけのことではなく、仕事に出る前の身支度や、帰ってきた後の家事などが負担になるため、仕事プラスアルファの疲労が蓄積するからなのだろう。

だとすれば、それらのソフトスキルが比較的必要とされない在宅ワークは余分なコストを削減でき、その分仕事のパフォーマンスが上がるという点で発達障害者に向いている職種だと言える。

誰がどのように働くにせよ、困難は降ってくるものだが、発達障害があることによってそれがより大きなものになることがある。

なんにせよ、在宅ワークという可能性は視野に入れておいてもいいのかもしれない。

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