自閉症スペクトラム(ASD)とタイムスリップ現象・フラッシュバック|第22回・発達障害を考える

自閉症スペクトラム(ASD)とタイムスリップ現象・フラッシュバック|第22回・発達障害を考える

サイトの解析を見ていて気になった検索ワードがあった。「発達障害 フラッシュバック 対処法」というものだ。

そんなものがあるのならば私も知りたい、ということで、調べてみたことをまとめていく。

発達障害の人はトラウマを抱えやすいのか

こちらの論文の中で、興味深い記述があったので、引用させていただく。

トラウマからみた発達障害の特徴

https://www.jstage.jst.go.jp/article/stresskagakukenkyu/30/0/30_16/_pdf/-char/ja

引用したのは主に、「自閉症スペクトラムを持っている人がいかに微細なネガティブストーリーを鮮明で克明な記憶として刻み込んでしまいやすいか」というところだ。

特定のネガティブな,しかし極めて深刻 には見えない特定エピソードについては,年余ののちにも鮮明な記憶と強い情動負荷が伴うことは,発達障 害,特に ASD の病理の大きな特徴であると思われる。

ふむふむ。

なるほどわからん。

もうちょっと引用を続けてみよう。

これらの患者が体験した出来事は確かにすべて不幸な過去ではあるが,比較的日常的で,極めて深刻とは言い難い。この出来事内容に比べて,患者たちの反応はしばしばあまりに激烈であり,その情動反応が年余に渡ってもなお減衰しない。

(中略)

出来事内容の特徴としては,厳しい質問をされた,叱責されたなど,他者か らネガティブな情動を向けられたことという共通点が 見いだせるかもしれない。他者からネガティブな感情 を向けられることはもちろん定型発達者にとっても辛 いことだが,なぜASDの患者はここまで激しい反応を年余に渡って示すのだろうか。

(中略)

その要因としてまず第一に,ASDの患者は他者の心理や場の状況を読むのが難しいため,他者の怒りは極めて唐突な青天の霹靂的な事象として経験されるのだと考えられる。

(中略)

また ASDの患者は怒号などの大きな音声に対し物理的な感 覚過敏があることも,驚愕の一因だろう。

つまり、

(1)ASDの人はいわゆる「空気を読む」ことが苦手なために、人が怒ったときなどになぜその人が怒ったのかがわからなくなり「天地がひっくり返ったような気持ち」になってしまいやすい。

(2)また、ASDの人は感覚過敏があることが多く、大きな声を出されたりするとビックリしてしまいやすい。

(3)それらのことが組み合わされると、「ネガティブな出来事」と「強烈なインパクト」が組み合わされることになり、他の人にとってみれば些細な出来事でも、ASDの人の心の中には強烈な出来事として記憶されやすい。

ということだろう。

そういわれてみれば私も、「よくもまあそんな些細なことを覚えてるよね」とか「そんな小さいことをいつまでも引きずって…」とか言われることが非常に多い。

よくもまあそんなことをいつまでもネチネチと…」となかば呆れ顔で言われることも多いのだが、私の中では昔のことは昔のことでもまるで今起こっていることかのように現実とダブってしまうのだからしょうがないのだ…。

…ということを先生は言っているのだろうな、と、はた、と思った次第である。

それをねちっこいというのかトラウマを抱えているというのかは人それぞれの間隔なんだろうとは思うが、物事の一面として、発達障害の人はそういう側面から見れば、トラウマを抱えやすく、また些細なことでもフラッシュバックしやすいのだろうな、と思った。

タイムスリップ現象について

お次は、こちらの論文である。

こちらの論文は浜松医科大学の杉山先生という先生が書かれた論文なのだが、発達障害とフラッシュバックについて語られるときによく言及される「タイムスリップ現象」はこの杉山先生が名付けた現象だ(という豆知識だ)。

自閉症の精神病理

https://www.jstage.jst.go.jp/article/japanacademyofas/13/2/13_5/_pdf/-char/en

さてさっそくタイムスリップ現象についての記述を引用してみよう。

自閉症スペクトラム障害の児童、成人が遙か昔のことを突然に想起し、あたかもつい先ほどのことのように扱うことがある。これを筆者はタイムスリップ現象 と命名した(杉山,1994)。

(中略)

フラッシュバックと同様、想起というより再体験である。

(中略)

筆者が行為チックと呼ぶ現象がある。それは、自閉症児がある出来事をそのままそっくり再現してみせる現象である。「何やっているんだ おまえは!」「もうしませんごめんなさい」などと、 過去に(恐らく)教師に叱責を受けた場面を自閉症児 が一人二役で演じてみせることがある。

杉山氏は自閉症児がトラウマを受けやすい理由として、先ほどの論文と同じように知覚過敏を挙げ、さらに愛着形成(平たく言うと親子関係の深いやつ)について言及しているが、ここで愛着の話までしてしまうと話がそれてしまうのでそれはまた別の機会に考えることにする。

話は戻って、タイムスリップ現象だが、これはもう読んで字のごとく、「まるでその時にタイムスリップしたかのように物事を思い出すこと」と言って差し支えないだろう。

私からしてみれば、タイムスリップ現象については「思い出す」という言葉よりも「追体験する」と言ったほうがしっくり来るかな…。

というのも、先ほども言ったように、過去をフラッシュバックするときは「まるで現在進行形で起こっていることのように現実とダブってしまう」ときであるからだ。

杉山氏が言及する「行為チック」についても、私は「そういうことある!」と思った。…というか、他の人はしないことなのか、とビックリした。人生30年近く生きてきて初めての衝撃的事実である…。

自閉症の子どもは独り言が多い、というのはむかーしにちょろっと言及したことがあるが、その独り言の一環として、私は、この行為チックを行っていたように思う。というか、行っている。

「記憶の穴埋め」をしてしまう…?

また、2008年発行とちょっと古いコラムなのだが、こちらの記事も興味深かった。

フラッシュバックの対応と工夫

http://myoujinshita.jp/Archive/asp_heart7_2.pdf

自閉症の人は興味関心が向かないことに関しては記憶が抜け落ちやすく、その間の記憶について思い出さなければいけない時、その記憶を「これこれこうだったにちがいない」と作り出してしまうことがある、というのだ。

一部のアスペルガー障 害の患者さんでは、数日程度の最近の自伝的記憶の想起に異常があって、明らかにあったことを覚えていなかったり、欠落している部分を作話的に補ってしまうことがある。しばしば、内容が自分に都合の悪いことなので、まわりからは嘘つきであると非難されることが多い。しかし、このようなケースで、本当に記憶の想起に問題があることは少なくないと考えられる。

私の場合、先ほどの「行為チック」とこの「記憶の作話」と合わせて、過去の嫌だった記憶を、自分が本当に持っていきたかった話の方向に合わせて「作話」して、何度も何度も声に出すことによって、トラウマから逃れようとするクセがある、と自覚している。

具体的には、本当は嫌だったけどはっきりと嫌だといえなかったことを、相手を論理的に言い負かしたかのように「作話」して、言い負かした「セリフ」を何度も何度もなぞる、というような具合だ。

それはだいたい家に帰った後、一息ついて、風呂に入っている最中に行うことが多いように思う。家に帰った直後から「演技」が始まったら、相当のストレスサインだな、という自覚はある。

それを繰り返し繰り返し行うことで、いわば記憶の改ざんを行っているのだと思う。

だが別にそれは誰にとって損がある話でもなく、ただひたすらに、自分の中で完結している行為であって、それを誰かに話した記憶は…ない…

…ないのだが、もしかしたら、「作話したことそのもの」を忘れて「作話したエピソード」を「実際に起こったこと」と勘違いして他人に話してしまっている可能性は…無きにしも非ず、である(恐ろしい事実に気づいてしまったぞ…)。

まとめ

最初の論点からだいぶずれてしまった。最初の論点は「発達障害 フラッシュバック 対処法」であったのに、最終的に行き着いたのは私の奇妙な行動だった。

今まで当たり前に行ってきたことを改めて文字に起こしてみると、随分と珍妙なことを行っていたんだなあということに気づき、そら恐ろしい気持ちになっている。

ちなみにフラッシュバックへの対処法としてざっと探してみたのだが、個人的にあまりここで自信をもっておすすめできるものがなかったので、これについてはまた改めて論じていきたいと思った次第である。

というような、もっともらしい結論をつけて今回は尻切れトンボで終わろうと思う。

ではまた次回。

発達障害を考えるカテゴリの最新記事