発達障害と摂食障害の関係性|第23回・発達障害を考える

発達障害と摂食障害の関係性|第23回・発達障害を考える

最近外仕事を始めた氷野だが、困っていることがある。

1年の療養を経、食欲が出る副作用のある抗うつ剤を飲んでようやく戻ってきた食欲が、また減退してきたのだ。

私は拒食症…とまではいかないのだが、ある程度食べ貯めると、途端に食べなくなる、という悪癖がある。そのおかげで、身長が175cmありながらBMI指数がいつも18前後と、健康と言われる数値を少し下回ってしまうのだ。

そこで摂食障害について調べてみた所、汎用性発達障害と摂食障害には意外に共通点があることがわかった。

参考にしたのはこちらの論文だ。

発達障害を合併する摂食障害

https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1120080750.pdf

発達障害と摂食障害の3つの共通点

論文によると

(1)実行機能の障害
(2)中枢性統合の障害
(3)社会性・共感性の障害

の3つの分野に置いて、発達障害と摂食障害には共通点が見られるという。

実行機能の障害

実行機能ではset shifting の障害が指摘されている。

これは臨床的には認知的柔軟性のなさ、あることから次のことへの切り替えの困難さであり、PDD(汎用性発達障害)に特徴とされてきたが、ED(摂食障害)でも同様に存在し、体重が回復した後も障害が残存するという報告がある。

また発症の有無に関わらず同胞にも認められるという報告や、ADHD、双極性障がいなどでも認められるという報告もあるため、この障害は精神疾患を形成するリスクを高める endophenotype である可能性が示唆されている。

なんのこっちゃねん、という感じだろうが、要は、

「汎用性発達障害も摂食障害も、認知に柔軟性がなく、ものごとの切り替えが苦手であるという特徴が似ている。

さらに、摂食障害は汎用性発達障害だけでなく他の精神疾患にもみられることから、精神疾患を形成する可能性が高い。」

ということだろう。

中枢性統合の障害

中枢性統合の障害は、細部にこだわり全体を把握することが困難であることであり、PDDでは以前より指摘されてきた。

EDにおいても同様の傾向が指摘されていて、これは身体の特定の部分へのやせへのこだわりが身体全体のやせや太りの認識ができないといったボディイメージの障害との関連も指摘されている。

これはまあわかりやすいかと思うので、私の要約は割愛。

社会性・共感性の障害

社会性・共感性の障害はPDDに特徴的とされた「心の理論」課題の困難さがEDでも指摘されている。

他人の思考の推測(cognitive Theory of Mind : cTOM)と情緒の推測(emotional Theory of Mind : eTOM)の両方ともEDでは低下しており、eTOM課題はEDの重症度(BMIや罹病期間)と関連がなかったという報告と、課題の不良が低体重の時期に限られるという報告がある。

要は、

「汎用性発達障害でも摂食障害でも、他人の思考や情緒を推し量る能力が低下しているが、摂食障害に関しては、他人の情緒に関する困難との関連性はまだ明らかになっていない」

ということである。

神経性食欲不振症について

特に、神経性食欲不振症(平たくいうと拒食症)については、

重傷の神経性食欲不振症の場合はこだわりが激しく、時に奇異で逸脱した行動に至ることもあるため、…症状だけを見ると汎用性発達障害にかなり類似してしまう可能性もある。

と指摘されている。

最近の研究

実際のところ、あまり最近の論文というのは発掘できなかったのが実際のところである。

さきほど挙げた論文は2010年のもので、それ以前は1991年の研究などがヒットする。これは私の生まれ年なので…ちょっと研究が古すぎるよなあ。

その中でも比較的最近と言える2014年にシンポジウムで発表された論文を紹介しよう。

摂食障害と発達障害

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/54/10/54_KJ00009544211/_pdf/-char/ja

合併率からみる共通点

合併率

論文によると、

発達障害の診断の範囲をどこまでとするかという問題は残るものの、海外、国内ともに合併率は10〜20%程度であるといえる。

とされている。

合併例の臨床的特徴

臨床像としては、発達障害の特徴と摂食障害の症状が重なる形となるが、合併を疑わせる症状として以下が挙げられる。

想像性(こだわり)の問題の領域としては、通常の拒食症に認められる、食事の種類やカロリー、体重へのこだわり、食事時間や食べ方、儀式的な行動に加え、やせ願望や肥満恐怖で説明できない独特な論理からのやせ、体重へのこだわりなどが挙げられる。

さらに、食事や体重より治療プログラムの次のステップが予定どおりに進むかどうかのほうに関心が高くなり、予定どおりに進まなかった場合には動揺が激しく、時に興奮やパニックといった過剰な反応を起こすなどの食行動以外でのこだわりの強さや切り替えの困難さが挙げられる。

社会性、対人接触の問題の領域としては、一方的な会話、他者の気持ちを感じ取ることの困難さとそれに伴う適切さを欠く行動が挙げられる。

治療場面では、治療者が治療方針を説明しても、部分的にしか理解していなかったり、本人独特の解釈をしていたりする場合があり、また一方手金自分の要求を述べたり、繰り返し確認をするなどが挙げられる。

ほうほう。

小難しいことを言っているが、要は、

「摂食障害と言っても、食に関する問題以外の部分で問題行動を起こすことがあり、それが汎用性発達障害の特徴に類似している」

という解釈でいいのかな、と思う。

海外の研究

ちょっと今は体力が無いので全文を訳すのは難しいのだが、2018年に発表されたこちらの論文でも、摂食障害を有する成人女性とASDの関係性について研究がなされている。

Assessing ASD in adolescent females with anorexia nervosa using clinical and developmental measures: a preliminary investigation

https://link.springer.com/article/10.1007/s10802-017-0301-x

これは詳編からの引用だが、

This study suggests that 10% of adolescents with AN from inpatient or day-patient settings may have diagnosable ASD, while a further 40% may show symptoms of ASD, which may arise from the ill-state of AN or are not supported by parental report.

拒食症を有する成人のうち10%がASDと診断され、40%がASDの傾向を有していることを示している、とのことだ。

ニワトリとタマゴ

発達障害について調べれば調べるほど、さまざまな症状と発達障害というのは、ニワトリとタマゴの関係だな、と思う。

というのも、どちらが先にあって、どちらが後から生まれてきたのかが判然としないものが多いからだ。どちらも先にあった可能性があるし、そもそも同時に存在していたのかもしれないし、その辺はわからないのだ。

しかし、少なくとも、摂食障害とASDに関しては、なんらかの関連性がありそうだ…ということがわかった。

このあたりに関して、またぞろインターネットで統計でも取ってみようかと思う。

今回はここまで。

それでは。

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